医師の不動産投資ってどうなの?
「新築区分マンションを買いませんか?」
といった業者からの電話、外線でPHSにかかってきてイラついた経験のある人も多いと思います。
あんな怪しい電話でマンションを実際購入する人はまずいないと思いますが、意外にも不動産投資をしている医師は少なくありません。
私自身、大家さんというものに対する漠然とした憧れを長年持っていました。
そこで本記事では、医師の不動産投資について、不動産投資未経験の中立的な立場からまとめてみたいと思います。
記事執筆時点では私自身は不動産投資をしておらず、本記事は医師の不動産投資を勧めるものでも否定するものでもありません。
調べた結果としてやや慎重なトーンでのまとめ方になりましたが、あくまで勉強中です。今後の状況次第では強くお勧めすることもあるかもしれません。
特に不動産投資をされている医師の皆様、記事内容の誤り、偏りなどあればご指摘頂けると幸いです!
不動産投資する場合の前提知識
なぜ不動産投資が節税になるのか?
マンションに限らず、あらゆる物の価値は年々減っていきます。
鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年で、法律的には新築マンションの建物部分の価値はその47分の1ずつ、毎年減っていくことになります。
中古物件の場合は新築購入の場合よりも耐用年数は少し延びます。
この考え方を「減価償却」といいます。
現金の収支=家賃収入 – ローン返済などのコスト(税金なども含む)ということになりますが、税金について考える場合には、
税制上の収支=家賃収入 – ローン返済などのコスト(税金なども含む) – 減価償却費
が重要です。課税対象はこちらの税制上の収支です。
もう一つの重要な制度が「損益通算」です。
不動産投資の税制上の収支が赤字の場合、本業の給与収入と相殺することができるというもので、結果として本業の見かけの給与収入が減ることで、節税に繋がります。
所得税は累進課税なので、給与収入が多い人ほど節税効果が高い、ということになります。
このため、高収入かつ資産運用に明るくない)医師が業者に狙われるわけですね。
それでは、具体的なメリットとデメリットについてまとめていきたいと思います。
不動産投資のメリット
生命保険代わりになる
マイホームの場合と同様、不動産投資でもローンを組む時は「団体信用生命保険」に加入することになります。
ローン加入者が死亡または高度障害状態となった場合に残りのローン支払いが免除されるというもので、要するに銀行と残された家族が困らないようにするための保険です。
中古マンションと同じ金額の死亡補償の生命保険に加入するとそれなりに毎月払わなければなりませんが、団体信用生命保険に加入していれば自身の死亡リスクに備えられるので、他の生命保険が不要になるというわけです。
インフレに強い
インフレになると物価が上がるため、現金の相対的な価値が下がります。
家賃収入についても物価指数の上昇とともに緩やかに増えること、銀行からの借入額の価値が相対的に下がること、の2点が、不動産投資がインフレに強いと言われる理由のようです。
ただし、変動金利でローンを組んでいる場合にはインフレにより金利も上がるはずなので、注意が必要でしょう。
医師の信用力で借入額を増やせる=スケールメリット
銀行でいくら借りられるかは、その人の年収と個人属性によって決まります。
個人属性とは、要するに銀行が貸し付けたお金を返してくれそうな人か?ということです。職業などの社会的信用によって決まります。
例えば、年収1500万の医師と、年収3000万のYouTuberのどちらが住宅ローンを組みやすいでしょうか?
いうまでもなく前者です。YouTuberは数年後生き残れるか甚だ不透明ですが、医師は医師免許がある以上いくらでも働き先がありますからね。
こうした医師の信用力を利用して借りられる上限目一杯まで借り入れを行うことで、より多くの物件に投資する(=多くのリターンを得られる)というわけです。
海外留学をする予定があっても(多分)問題ない
銀行からの貸付は基本的に日本国内に居住している人に対して行うものなので、海外留学をする場合に一括返済を求められてしまうのではないか、という点を懸念していたのですが、その点は大丈夫なようです。
不動産会社に聞いてみたところ、商社なので海外転勤がある方でもローンを組んで不動産投資を行なっているとのことでした。
余談ですが、住宅ローンに関しては銀行により対応が異なるようです。家族全員で海外に居住する場合、さらにその家を他人に貸す場合には、一括返済や投資用ローンへの借換えを求められるケースもあるようです(住宅ローンのままで転貸しても問題ない、という不動産会社もありましたが、本当のところはよく分かりません)。家族が日本の家に住み続ける場合には当然問題ありません。
不動産投資のデメリット
思ったほどの節税にはならない(はず)
まず大前提として、不動産投資で節税するためには赤字にならなくてはいけません。
税金などのコストが諸々かかるので初年度の赤字はまだしも、2年目以降も大幅な赤字が続くようでは、そもそもの運用体制に問題があると言えるでしょう(空室リスクが高いなど物件自体がよくなかったり、不当に物件価格が高かったりするなど)。
つまり、節税になることをやたらと強調する不動産会社は信用できないと考えます。
予測が難しいリスクがつきまとう
人が生活する場所を提供している以上、不動産投資には様々なリスクが伴います。
居住者のトラブルは管理会社に介入してもらうから良いとしても、水回りなどの設備の故障や共用部分の大規模修繕に伴う出費、空室・家賃下落・自然災害などのリスクが挙げられます。
空室補償や保険で備えることも可能ですが、余計なコストがかかります。
これらの予測不能なタイミングで訪れる事象を許容できる人でないと、不動産投資は難しそうです。
資産としての流動性が低い
一般的に、不動産投資を始めてしまうと、すぐにやめることは難しいです。
投資開始時点で様々なコストがかかり一旦赤字になった後、(上記の様々なリスクや出費を負いながらも)家賃収入でローンを完済し最終的に手元に不動産が残る、これが不動産投資のゴールだと思います。
物件を売却することで投資分を回収できるようになるのは投資開始からしばらく経ってからだと思いますし、そもそも買い手がつかない限り現金化できません(不動産会社に売却すると安く買い叩かれる)。
つまり、じっくり腰を据えて取り組まないと結果を出せないのが不動産投資と言えるでしょう。すぐに利益確定できる投資信託などの金融商品とは性格が大きく異なります。
マイホームのローンを組んでからだと参入が難しい
銀行からの借入額の上限は、マイホームのローンも含めた他の借金を含めて判定されます。
医師の場合、年収の8倍くらいまでの借入は通る傾向があるようです。
年収1500万の医師の場合、1億くらい借りられるわけですが、マイホームで8000万の住宅ローンを返済中だと不動産投資に使えるのは2000万だけになってしまいます。
不動産投資を検討するのは医師の仕事に慣れ経済的に余裕の出てきた年齢層(=30代以降)だと思いますが、マイホームの購入を検討する時期でもあります。
マイホームのローンや開業資金の借入の足枷になる
逆に、不動産投資で多額の借入をした状態では、銀行からマイホームのローンや開業資金の借入可能額に影響が出る可能性があります。
不動産投資が順調にいっている場合には、銀行から事業とみなしてもらえることで借入可能額の計算には入らないこともあるようですが、実際どうなるかはケースバイケースなのではないかと思います。
老後の資産形成のために今の自分が住む家や開業に影響が出るようでは、本末転倒のような気もします。
不動産投資のポイント
メリットもデメリットもある不動産投資。自分なりに色々と調べる中で、特に重要だと感じたポイントを列挙します。
物件選びが最も大事
不動産投資において、最も恐れるべきは空室リスクだと思います。
居住の有無に関わらずローンの返済や建物の劣化は進んでいくのに、空室だと収入がゼロになるわけです。
空室リスクを減らすには、賃貸のニーズがあるエリアを選ぶことはもちろん、駅からの距離、物件や共用部分の管理体制などが非常に重要です。
良い条件で、かつそれに見合う(高すぎない)価格である物件を選ぶ必要がありますが、そのためには相場観を養うとともに、普段から良い物件へのアンテナを張っておかなくてはいけません。
ほったらかしにできる管理会社を選ぶ
大前提として、医師にとって不動産投資は単なる資産運用、副業にすぎません。
物件選びは重要だと思いますが、その後の管理に時間を取られて本業である医師としての仕事が疎かになることがあってはならないと思います。
投資用の不動産を購入した後は、管理会社に管理を委託することになりますが、管理会社が担当してくれる範囲は様々なようです。
完全にほったらかしにできる管理会社を選ぶのが良いと思います。
RENOSY(リノシー)は割と良さそう
調べた中で良さそうと感じた管理会社はリノシーです。
実際にオンラインで担当者の方と面談しましたが、デメリットも含め不動産投資についてわかりやすく説明してくれました。
設備故障や空室リスクなどにも備えられるプランも備えており、本業に全く影響を出さずに不動産投資を続けることが可能なようです。
今回申し込みには至りませんでしたが(笑)、不動産投資する場合はここに頼もう、と思える会社でした。営業がしつこくないのも好印象でした。
オンライン面談するとAmazonギフト券もらえるキャンペーンをやっており、勉強にもなるので一石二鳥です!
不動産投資以外の資産運用で十分かも?
メリット・デメリットについて詳しく書いてきましたが、
- マイホームのローンをすでに組んでいる
- 資産としての流動性が低い
といった点で、魅力は感じるものの現時点では私は不動産投資は見合わせることにしました。が、上手くやれば/ライフスタイルや自分の考え方と合えば悪くない投資であることは確かだと思います。
マイホーム自体、不動産という資産に投資しているようなものなので、ひとまず私は投資信託(楽天証券のS &P500 1本買い。別記事でまとめています)での資産運用を続けていこうと思っています。
まとめ
色々調べてみた結果、不動産投資は悪くない投資ではあるものの、万人には勧めにくいと考えます。
焦って始める必要はなく、マイホームを購入するか/開業するかが決まってから検討すれば充分かなと思います。
まずはハードルの低い投資信託での資産運用を始めるのが良いと思います。