医学博士を基礎研究で取得する人へ
他学部の場合、学位の取得は学士(大学の4年間)→修士(2年間)→博士(医歯薬系以外だと3年間)と、基本的には間を空けずに進むのが一般的です。
それに対して、医師の大学院入学のタイミングは非常に特殊です。
医学部は6年間なので、卒業時点で他学部でいう修士相当になります。そして、医師免許取得後に初期臨床研修を終え、しばらく臨床の研鑽を積んだ後に大学院に入るのが一般的です。
私自身、医師免許取得後しばらくは臨床のみに従事していましたが、大学院に入ってから基礎研究を開始しました。
若い世代では医学博士を取得しない医師も増えており、特に基礎研究についてはなかなかイメージが湧かない人も多いかと思います。
本記事では、自分の体験を踏まえて、研究室の選び方について解説していきます。
臨床研究で学位を取りたい人には当てはまらない内容かもしれません。参考程度にとどめてください。
大学院に入るべきかどうかについては、別記事でまとめます。
研究室のホームページを見てみよう
どこの大学の研究室も、大学公式・非公式を問わずHPを開設していることが多いです。かなり多くの情報を得ることが出来るので、研究室を選ぶときは必ずHPに目を通すようにしましょう。
研究室の得意分野は何か?
研究室の主宰者のコメントはもちろん、研究業績を見ることで、その研究室が得意としている分野が見えてきます。
自分が興味を持っている、或いは興味を持てそうな領域か、確認しましょう。
研究室の規模はどうか?
メンバー紹介などのページを見ると、大体何人くらい所属しているか分かります。
大学院生が何人いるのか、教室主宰者以外に指導をしてくれそうな人がいるのか、など確認しましょう。
研究費はどれくらいあるか?
これは研究室のHPには記載されていないこともありますが、教室主宰者の名前で科研費を検索することで、大体どれくらいの研究費を獲得できているか分かります。
金額を見てもピンと来ないので、他の研究室と比較すると良いと思います。
また、獲得した研究費の総額だけではなく、研究室の規模とのバランスも見るようにしましょう。人数の多い研究室ではそのぶん1人あたりが使える金額は減ります。
研究室の業績はどうか?
年間何本くらい論文を出しているか、どれくらいのレベル(インパクトファクター)のジャーナルか(イコールその論文の研究の価値ではありませんが)、などを見ましょう。
随分前の論文が業績として載っていることもありますが、研究室主宰者になる前の留学先での研究であることも多いので注意が必要です。
業績が特定のメンバーに偏っていないか?
これは注意が必要なポイントです。
すごいジャーナルにバンバン論文を載せている研究室だと思ったら、実は優秀な1人だけの業績で、他のメンバーは全然論文を出せていない、、、ということもあります。
また、研究室主宰者が特定のメンバーに良いテーマを与えたり実験や論文執筆をサポートする、ということも時にあると聞きます。気をつけましょう。
博士号取得後の進路はどうか?
多くのメンバーが博士号の取得後も研究室に残ったり、留学も含め外部の機関に移り基礎研究を続けている研究室は、研究者の育成に成功していると言えるでしょう。
一方、メンバーが学位取得後は基礎研究をすっぱり辞めて臨床に戻る、医局をやめるなどしている人が多い研究室は要注意です。
研究室へ見学に行ってみよう
上で述べた通り、研究室のホームページなどネット上で得られる情報でも多くのことを推測することができますが、やはり直接見学に行き雰囲気を感じないことには、実際のところはわかりません。
メールでも口頭でも良いので、研究室主宰者に連絡を取り見学を申し込みましょう。
よほど研究費が逼迫しているところでなければ、見学を快く受け入れてくれるはずです。
上司の人柄はどうか?
まず大事なポイントとしては、研究室主宰者をはじめとする上司の人柄です。
研究室主宰者はもちろん優れた業績を持っていますが、良いプレーヤー=良い監督とは限りません。
いち研究者としていくら優秀でも、人格が破綻している人のもとで働くのは辛いと思います。
部下達は生き生きと仕事をしているか?
上記とも関連しますが、大学院生をはじめとする研究室のメンバーが生き生きと働いているかを見るようにしましょう。
研究室見学や勧誘会などではいくらでも取り繕えてしまうので、できれば上司のいないところで先輩から本音を聞いてみるのが良いと思います。
平日何時頃まで研究しているか?土日はどうか
基礎研究は自分のペースで進められる反面、夜眠る患者さんとは違ってやろうと思えば夜でも土日でも好きなだけ出来てしまいます。
研究室主宰者や他のメンバーとのモチベーションの乖離があると、だんだんと辛くなってしまうかもしれません。
研究室主宰者や他のメンバーが平日夜や休日にどの程度研究をしているか、あらかじめ確認するようにしましょう。
研究が楽しくて楽しくてたまらない、いくら研究しても疲れないしプライベートな時間も要らない…という人なら気にしなくて良いポイントですが、そんな人はごく稀だと思います。
家庭を持つメンバーへの配慮がされているか?
医師が大学院に入る年齢は30歳前後のことが多いので、家庭を持っている人も少なくないと思います。
特に、共働きで子育て中だと、男女関係なく家事育児に多くのリソースを割かなくてはいけません。
子供の発熱で急遽お迎えに行かなくてはいけなかったり、どうしても夜間や土日は研究室にいられなかったり…。
そうした点への配慮がなされているかも重要なポイントです。
カンファランスや論文の捗読会があるか?
研究の進捗報告や論文の捗読会は、あまりに頻繁だと準備に時間を取られて迷惑な面もあるのですが、適度な頻度なら研究の良いペースメーカーになります。
この辺りのスタンスは研究室によって大きく異なる(捗読会を一切やらない研究室もあります)ので、確認してみましょう。
外部からも情報収集をしよう
他の研究室からの評判は?
人手不足の研究室に入ってくれそうな人が見学に来ると、研究室主宰者もその部下もあの手この手で勧誘をしてくるものです。
良い面ばかり話したり、(結果が出るかわからないけど)魅力的に見える研究テーマをチラつかせたり、高いお店で食事会を開催したり…など。
思わず首を縦に振りそうになりますが、少し立ち止まって客観的な情報を得るようにしましょう。
その一つとして、他の研究室の人から見てその研究室はどうみえているか、評判を調べることが有用です。
ホームページや内部からの情報だけでは分からなかった、思わぬ欠点が見えてくるかもしれません。
実際入ってみないと分からないこともある
色々と述べてきましたが、最終的には実際に入ってみないと分からないことも多々あります。
そもそも基礎研究自体、向き・不向きが間違いなくあります。
十分下調べをして入っても、不運にも自分には合わない環境だった…ということも時には起こるでしょう。
でも、過度に悲観することはありません。
向いていない、合わないと思ったとしても、4年間頑張れば博士号自体はほぼ間違いなく取れますし、基礎研究を辞めても臨床医に戻れば良いだけなのですから。
基礎研究をやっている最中でも医師バイトはできる
大学院生の期間中も医師としてバイトができます。むしろ、大学病院でのdutyが減るし時間の融通が効きやすくなるので、臨床をやっているときよりもバイトは圧倒的にやりやすいです!
スポットはもちろん、定期的な非常勤に応募することも容易です。
博士号取得後も見据えて、転職先を探すのにもちょうど良い期間と言えます。
代表的な医師紹介会社に登録しておき、良いバイトの案件を逃さないようにしましょう!
まとめ
大学院生として少なくとも4年間所属することになる研究室の選び方についてまとめました。
より多くの情報を事前に集めて、後悔のない選択をしましょう!
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